視察・調査

EPOC視察(企画活動)余市&室蘭・苫小牧方面視察会
「自然共生・脱炭素・資源循環の取組み調査」報告書

《概要》

日時: 2023年10月11日(水曜日)〜10月12日(木曜日)
目的: EPOCで調査・研究を進めている先進技術の取組みの中から「持続可能な開発の実践」の理解を深めるため、余市では豊かな自然と共生して事業活動を展開する様子を学び、室蘭・苫小牧では最新の技術を駆使した脱炭素・資源循環への取組みや地道な日々の業務改善による省エネへの取組みを視察しました。
視察先:
  1. NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト様
  2. 株式会社NIKI Hills ヴィレッジ様
  3. 五洋建設株式会社 室蘭製作所様
  4. 日本製鉄株式会社 北日本製作所 室蘭地区様
  5. トヨタ自動車北海道株式会社様
参加者: 36名

《各施設の見学内容》

  1. NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト様

     北海道エコビレッジ推進プロジェクトでは、「持続可能な暮らしと社会=エコビレッジ」の推進を目的に環境的、社会的に豊かな次世代のコミュニティモデルの創造および普及啓発にかかる活動を行っています。
     食糧やエネルギーなどの暮らしに必要なものをできるだけ自ら作り出すことやそれらを地域で共有することなど地域の活性化にも貢献したいと考え、2012年の設立以来余市を拠点に活動しています。
     今回、北海道エコビレッジ推進プロジェクトの坂本理事長からヨーロッパ各地のエコビレッジを訪問し、エコビレッジの自給的暮らしとコミュニティの社会的インパクトに感銘を受け、どうしても日本でエコビレッジを設立したいとの思いに駆られた貴重なお話をうかがうことができました。
     農家と交流できる農園ツアーや多文化共生のためのワイン作りなど多くのイベントを手掛ける余市エコビレッジの活動こそが、持続的な未来を考えた「新しい暮らし方」モデルになると感じました。


    坂本理事長による取組み説明

    余市駅周辺会議室で集合写真

  2. 株式会社NIKI Hills ヴィレッジ様

     NIKI Hillsヴィレッジでは、ワイン用ブドウの国内生産地として古くから歴史を築いてきた余市・仁木町の実績を活かし、仁木町に構えた自社ワイナリーで原料も醸造も地域に根ざした、この土地でしか表現できない味を追求しています。
     NIKI Hillsヴィレッジはナチュラリスト故C.W.二コル氏のアドバイスを受け、森の再生に向けた整備を行ってきました。森の整備に加えて、ナチュラルガーデンの造成も行っており、自然と共生しながらストレスフリーの生活を送れる未来を提案しています。
     今回の視察では総支配人の舟津さんの案内で森を散策中に天然記念物のクマゲラに遭遇することができました。ブドウ畑では収穫直前のブドウを試食し、仕込みが最盛期の醸造所では収穫したブドウを絞っている現場を見学させていただき、とても貴重な体験ができました。ワイナリーでワインを購入し、夕食時にいただきましたが、とても美味しくて皆さん大満足でした。


    舟津総支配人による取組み説明

    (株)NIKI Hills ヴィレッジで集合写真

  3. 五洋建設株式会社 室蘭製作所様

     第2日の最初の視察先として五洋建設 室蘭製作所を訪問しました。五洋建設は、土木・建築・海外の部門を持ち、地域・都市開発、海洋開発、不動産、建設工事の設計及び請負などを行い、海外では、東南アジアに強く、大規模インフラ、大型商業施設や病院の建設などの実績があります。
     室蘭製作所では、工場と事務所で使う電力を全て再生可能エネルギーでまかなう「再エネ100%工場」を実現し、事務所棟は、断熱性を高めるなど省エネ性能を高めるとともに、使用電力を全て再エネでまかなうことでBELSのZEB認証を取得しています。
     再エネ電力は、屋根上に設置した太陽光発電を主力に、燃料電池を用いた水素発電も併用し、水素は道内の工場で副次的に製造された副生水素に加えて、太陽光発電の電力から水電解装置を用いて製造したグリーン水素も利用しています。今回の視察ではグリーン水素を製造、貯蔵している現場を丁寧に説明していただき、大変勉強になりました。
     「再エネ100%工場」の取組みを通じて、建物や工場のZEB化、水素エネルギーの利用等に関する知見を蓄積し、今後は洋上風力建設関連の仮設鋼構造物等の製作を担うグリーン工場として、更なる発展を目指している室蘭製作所の皆さんの思いを感じることができました。


    室蘭製作所 会議室にて概要説明

    室蘭製作所 副生水素タンク

  4. 日本製鉄株式会社 北日本製作所 室蘭地区様

     続いて同じ室蘭市内にある日本製鉄株式会社 北日本製作所 室蘭地区を訪問しました。
     東西約3.3キロメートル、南北約2.5キロメートル、敷地面積433万平方メートルに及ぶ日本製鉄の北日本製鉄所 室蘭地区は、主力商品が特殊鋼の棒鋼と線材で、注文に応じ自動車部品向けなど約500の製品を全国に出荷しています。
     最初に会社概要をご説明いただき、お借りした視察用のジャケット、手袋、メガネを着用し安全対策も万全で工場内を視察させていただきました。高炉までバスで移動しましたが、時間や風景が敷地内ではなく街中を走っていると錯覚するほどの工場のスケールの大きさを体感できました。
     当日は、メンテナンスのため高炉の稼働が停止しており、外から機能などについて説明していただきました。高炉の外観からは日本経済を支えてきた歴史を感じましたが、機能的には高温の排気ガスを熱源として回収し、再度炉に戻すことで徹底的な省エネ、CO2排出削減に努めるなどカーボンニュートラルの達成に向けて進化し続けていることを学びました。また、炭酸ガス回収設備も見学させていただき、製鉄の各プロセスで発生した排気ガスからCO2を一度固定・回収し、次に純度の高い炭酸ガスとして製造することで溶接用のガスやビールなど清涼飲料水用に利用することで有効活用されていることに驚きました。室蘭地区での様々な取組みを大変わかりやすく説明していただき、理解を深めることができました。


    青木様による会社概要説明

    日本製鉄(株) 北日本製作所 室蘭地区で集合写真

  5. トヨタ自動車北海道株式会社様

     最後は苫小牧市に移動してトヨタ自動車北海道株式会社を訪問しました。
     1991年に設立されたトヨタ自動車北海道は、トヨタの北の拠点として駆動ユニットの製造を行い、苫小牧から国内はもとより世界中のトヨタの工場に製品を供給しています。自動車産業は、脱炭素社会に向けて、電動化が加速していますが、トヨタ自動車北海道では原価低減やトヨタ生産方式、そして質にこだわった基本の徹底による会社基盤の強化に取り組んでいます。
     最初に会社概要をご説明いただいた後、2班に分かれ移動にはバスを使用して工場を見学させていただきました。工場内は生産工程の多くが自動化されていましたが、「からくり」技術を応用した装置も活躍しており、近くで眺めることでコストだけではなく省エネにも効果があることを実感できました。
     また、工場での人材教育としてESCO道場を立上げ、3回/月ほど座学や実技講習を実施することで、道場に参加したメンバー全員の業務改善への意識を高め、工場全体で日々改善提案に取り組んでいることを教えていただきました。
     最先端の技術で世界のトップ企業となった今でも日常業務の改善を最優先に考えるトヨタ自動車の現場力の素晴らしさを学ぶことができました。


    代表取締役専務 吉田様 ご挨拶

    トヨタ自動車北海道(株)で集合写真

《視察を終えて》

 今回の視察ではEPOCの2030年ビジョンでもある「脱炭素」・「資源循環」・「自然共生」を相互に協調させた「持続可能な経済社会」の構築を推進している北海道の余市、室蘭、苫小牧の団体や企業を訪問しました。
 余市では持続可能な経済社会を構築するために生活や事業に必要なものをその地域の特長を活かして育て上げ、地域の活性化につなげている取組みを学びました。
 室蘭、苫小牧では広大な敷地を利用した太陽光発電システムや水素発電システム、最先端の技術となるCO2回収プロセス、省エネへの改善活動などカーボンニュートラルを実現しながら持続可能な経済社会の構築も目指している日本を代表する企業の様々な取組みを見学することができました。

 いずれの施設におきましても現地において事業に携わられる方々から直接お話を伺い、また自らの目で見て感じることを通して、知見を広めることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。本報告書が、視察に参加された皆さまをはじめ、EPOC会員の皆さまの参考になれば幸いです。

 最後になりますが、視察団を快く受け入れ、惜しみなく知見をご教示頂きました各視察先様に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。