視察・調査

EPOC視察(企画活動)大分方面視察会
「環境・エネルギー関連の取り組み調査」実施報告

概要

日時: 2019年11月25日(月曜日)〜11月26日(火曜日)
目的: 山林や海洋、地熱などの自然資本に恵まれた大分県に焦点をあてて、それらを活かした企業の取り組みを視察し、持続可能な開発の可能性や課題について理解を深める。
視察先: 1.田島山業株式会社様
2.九州電力株式会社様 八丁原地熱発電所
3.ジャパン・ニュー・エナジー株式会社様 水分地熱発電所
4.株式会社アクアファーム様
参加者: 27名

<< 各施設の見学内容 >>

1.田島山業株式会社様

 田島山業は、大分県西部の日田市において約1,200ha(東京ドーム約255個分)の森林を保有しています。田島家は鎌倉時代から続く林業家ですが、現在の田島社長は、大学で法律を学び、卒業後は百貨店に務め、海外留学の経験もあるという異色の経歴をお持ちです。経済団体や行政への提言、著作などを通じて日本の林業に対する想いを発信し続けておられます。

 視察では、最初に伐採現場へ移動し「ハーベスタ」という高性能な林業機械を用いた造材作業や、チェーンソーによる樹木の伐採作業を見学させて頂きました。現地において、田島社長からご説明を受けつつ、作業に従事していた社員にもお話を伺うことができました。視察後は麓のスポーツセンター(2002ワールドカップにおけるカメルーン代表の合宿地)に移動して、田島社長から取り組みのご紹介と林業業界の現状と今後の展望等に関するご講演を頂きました。木材の国産材価格低迷やバイオマスを巡る林野行政の動向、将来社会の不確実性などにより、林業が「山に木を植え、育て、使う、そしてまた植える」というサイクルを維持し難くなっている危機的現状について理解を深めることができました。田島社長のお話しからは、人材育成や、機械化、早生樹などの新技術の導入、流通の変革等、様々な挑戦を通じて持続可能な林業を実現させたいという熱意が伝わってきました。

2.九州電力株式会社様 八丁原地熱発電所

 八丁原地熱発電所は、発電量11万kWを誇る日本最大の地熱発電所です。大分県は地熱エネルギーのポテンシャルが高く、早くから地熱発電への取り組みが進められてきました。八丁原地熱発電所は戦後まもなく調査・研究が開始され、1977年に1号機が、1990年に2号機が稼働しました。

 視察では、最初に展示館において、地熱発電の仕組みについてご解説を頂きました。地熱発電は、石油などの化石燃料を使わず、蒸気井から取り出した蒸気と熱水を利用して発電機のタービンを回します。八丁原地熱発電所においては、蒸気を高圧と低圧の二段階で利用するダブルフラッシュ方式を採用しています。更に低温の蒸気を利用可能なバイナリー発電も導入し、全体の発電効率を高めています。蒸気を取り出した残りの熱水は、還元井から地下へと戻して水資源を循環させています。

 説明後は外へ出て、蒸気井、気水分離器、冷却塔や蒸気タービン発電機などの施設を見学させて頂きました。見学後の質疑では、温泉成分によりスケール(湯垢)が蒸気井のパイプ内側に付着し、メンテナンスに相当費用を要すること、地熱候補地は国立公園が多く開発規制や温泉法の制限を受けるため調査・調整に長い時間を要すること等もご説明頂きました。その他の質問にも丁寧にお答え頂き、地熱発電の現状と課題について理解を深めることができました。

3.ジャパン・ニュー・エナジー株式会社様 水分地熱発電所

 水分地熱発電所は、クローズドサイクル地熱発電システム(JNEC方式)を採用した世界初の実用化実証プラントです。見学にあたり、ジャパン・ニュー・エナジー株式会社の秋田副社長からご挨拶を頂き、続けて共同開発者である京都大学工学研究科の横峯教授から、JNEC方式の仕組みについて、パネルと施設を見ながらご解説頂きました。JNEC方式は、従来の地熱発電と異なり、地中から蒸気や熱水を汲み上げません。この方式は同軸二重型の地中管を高温地熱帯(水分は1500m程度)まで入れて、地上から地中管の外管と内管の隙間に水を注入、地中で熱した後、内管から地上で蒸気として取り出し、発電機を回します。発電後の蒸気は冷却して水に戻し、再び外管に注入して循環させるため、発電時にCO2を排出しないことも長所です。更に温泉水を使用しないため、従来の地熱発電の障壁であったリードタイムを短縮し、莫大なメンテナンス費も低減でき、安全で安定した電力を長期にわたり供給することが可能です。現地でご対応頂きました皆様には、参加者からの多数の質問にも丁寧にお答えいただき、新たな地熱発電の可能性について理解を深めることができました。

4.株式会社アクアファーム様

 アクアファーム本店は水産加工食品大手のマルハニチロ株式会社の現地子会社として、大分県佐伯市においてブリとマグロの養殖を手掛けています。2015年より「完全養殖マグロ」の養成を開始、2017年より全国へ出荷開始、2018年にはブリ養殖でASC認証を取得し、管理型養殖業において水産資源の調達を持続可能なものにする取り組みを進めています。

 最初に、養殖場を見学するためブリとマグロの生簀(いけす)が設置されている沖合に船で移動しました。生簀に横付けした船上において、渡辺所長から施設と、魚の育成から出荷までの流れについてご説明頂きました。生簀では泳ぐマグロを間近に見ることができ、餌やり体験もさせて頂きました。

 その後港に戻り、会議室において会社概要や取り組み、養殖に対する考え方等についてご紹介を頂きました。完全養殖マグロは、マルハニチロ様が民間企業として世界で初めて商用化に成功したことや、アクアファーム本店は、EU・HACCP認証を取得しており、養殖マグロにおいては、日本で唯一EUへの輸出も行っていること等、知らなかった事実に一同驚きました。ご講演は、世界の食糧問題の話題にまで及び、水産業を通じた持続可能な開発について参加者各自が考えさせられる、大変充実した視察となりました。

視察を終えて

 今回の視察は、持続可能な開発について理解を深めるため、大分県における民間企業の取り組みに着目しました。事例として、持続可能な林業を目指す田島山業様、以前より地熱エネルギーを活用している九州電力様の八丁原地熱発電所、新たな方式にて地熱発電に取り組んでいるジャパン・ニュー・エナジー様の水分地熱発電所、持続可能な水産業に取り組んでおられるアクアファーム様にお伺いしました。山林や海洋、地熱などのポテンャルが高い地域であっても、技術や社会、制度等に起因した様々な課題を抱えていることが良く分かりました。課題を乗り越えて持続可能な開発を実現するべく現場で奮闘されている方々から直接お話を伺い、また自らの目で見て感じることを通して、知見を広めることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。

 最後になりますが、視察団を快く受け入れて頂いた各視察先様には、この場をお借りして深く御礼を申し上げます。

EPOC会長会社事務局(東海旅客鉄道梶@総合技術本部 技術開発部)