視察・調査

EPOC 低炭素社会分科会 「川崎エココンビナート視察」

【はじめに】

低炭素社会分科会では、低炭素社会に向けた先進取り組み事例や革新技術の調査・研究を通じ、EPOC会員各社のレベルアップと相互交流ならびに連携の促進を図っています。
今回は、国際環境特別区構想のもと、産業、都市及び環境の再生に取り組む川崎市の川崎エココンビナートにある川崎バイオマス発電株式会社及び併設のチップ工場であるジャパンバイオエナジー株式会社を訪問し再生可能な新エネルギーへの取り組みについてご紹介頂きました。また、かわさきエコ暮らし未来館を訪問し環境問題について学び浮島処理センター及び川崎臨海新メガソーラーの見学をさせて頂きました。


開催日時 2011年10月14日(金曜日) 10時15分〜16時20分
見学先 1.川崎バイオマス発電株式会社
2.ジャパンバイオエナジー株式会社
3.かわさきエコ暮らし未来館(浮島処理センター、川崎臨海新メガソーラー)
参加者 36名

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    1.川崎バイオマス発電株式会社
    (神奈川県川崎市川崎区扇町12番6号)

    「川崎バイオマス発電株式会社」と「バグフィルター(ダスト除去設備)」の写真

    【概説】


    (1)バイオマス発電
    川崎バイオマス発電所は建築廃材等の木質バイオマス燃料を利用した出力33,000kWの国内最大のバイオマス専焼発電所です。川崎バイオマス発電の年間販売電力量は約1億7,800万kWhにのぼり、それは一般家庭約38,000世帯が1年間に使用する電力量に相当します。CO2フリー(カーボンニュートラル)の電力供給による地球温暖化防止と川崎市の厳しい環境規制を高いレベルでクリアした環境設備を有する「都市型バイオマス発電所」として大気環境の保全に努めています。また、従来は産業廃棄物として処理されていた建築廃材等を燃料として利用することで資源リサイクルにも積極的に貢献しています。


    (2)カーボンニュートラル(CO2フリー)
    川崎バイオマス発電所は石油・石炭等の化石燃料を使用せず、木質バイオマス燃料を利用するバイオマス専焼発電設備でCO2フリー電気を供給する環境にやさしい発電設備です。川崎バイオマス発電所で電気を作ることで、年間約12万tのCO2を削減することができます。発電所で利用する木質バイオマス燃料 は周辺地域で発生する建設廃材、間伐材、樹木の剪定枝等から作られた木質チップを利用します。これらの樹木は成長の過程において光合成により大気中のCO2を吸収して酸素を生産しています。バイオマス燃料を燃焼させるときに発生するCO2はもともと大気中から樹木が吸収していたものが大気中に戻るだけなので大気中のCO2濃度に影響を与えるものではありません。これがカーボンニュートラルの概念です。


    (3)環境設備
    川崎バイオマス発電所は、川崎市の厳しい環境基準をクリアするため、排煙脱硫装置や排煙脱硝装置、バグフィルターといった環境設備を備えた国内唯一の「都市型バイオマス発電所」です。住宅需要が多い都市部では、建設廃材等が多く発生します。従来は焼却処分されていたこれらの資源をバイオマス燃料として発電向けに利用することで、燃焼時に生じる熱エネルギーを利活用する「サーマルリサイクル」を都市部で促進しています。川崎バイオマス発電所の環境設備には下記のものがあります。


    排煙脱硫装置 燃焼時に発生するSOx(硫黄酸化物)を無害化し排出量を3ppm以下まで削減
    排煙脱硝装置 燃焼時に発生するNOx(窒素酸化物)を無害化し排出量を30ppm以下まで削減
    バグフィルター 排気ガス中のダスト(ばいじん)を除去し、排出量を7.4mg/Nm3以下まで削減
    ボイラ 環境負荷の小さい循環流動層ボイラを採用
    タービン 軸流式抽気復水タービンを採用し発電効率を向上
    チップヤード 安定した発電所の稼動のため最大6,000t(約10日分)の燃料を保管
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    2.ジャパンバイオエナジー株式会社
    (神奈川県川崎市川崎区扇町12番7号)

    「チップ製造工場」と「製造されたチップ」の写真

    【概説】


    ジャパンバイオエナジー株式会社では工場周辺で発生する木質廃材をチップ化し、隣接する「川崎バイオマス発電所」にバイオマス燃料として供給する一貫したリサイクルシステムを構築しています。木質廃材とは、住宅の解体時に発生する柱や梁、使用済みのパレット、不要になった木製家具、剪定された樹木等で、主として地元神奈川県や東京都の西部地区から工場に持ち込まれます。工場では、それらの木質廃材を分別、破砕してチップ化します。破砕されたチップはチップスクリーンを通して大きさを整えられると共に、磁力選別機で混じっている釘などの鉄くずを取り除かれコンベア上で重量を計測したのち、川崎バイオマス発電所の木質燃料建屋に直接コンベアで投入されます。この合理的なシステムにより、遠方の発電所への燃料チップの運搬が不要になることで配送等に伴うCO2の排出量を削減することができます。


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    3.かわさきエコ暮らし未来館
    (神奈川県川崎市川崎区浮島町509-1 浮島処理センター内)

    「かわさきエコ暮らし未来館」と「太陽光パネルと風力発電用ファン」の写真

    【概説】


    (1)かわさきエコ暮らし未来館
    かわさきエコ暮らし未来館は浮島処理センター内に環境学習施設として作られた施設です。館内は地球温暖化チャレンジゾーン、再生可能エネルギーゾーン、資源循環チャレンジゾーンの3つのゾーンで構成されており、それぞれのテーマに沿って、「見て、聞いて、触って、学べる施設」となっています。今回の視察のテーマである再生可能エネルギーのゾーンには太陽光パネルや風力発電用のファンなど川崎の臨海部に集まる最先端の環境技術が展示されており実際にその大きさや素材を実感することができました。


    (2)浮島処理センター(ごみ焼却、資源化処理施設、粗大ごみ処理)
    「資源化処理施設」の写真
    浮島処理センターでは、ごみの焼却、資源化処理及び粗大ごみの処理をしています。資源化処理施設では、「ミックスペーパー(雑紙)」と「プラスティック容器包装」を破袋して、資源物と不適物とに手選別し再資源化を実施しています。この施設では一日に70tの「ミックスペーパー(雑紙)」と55tの「プラスティック容器包装」の処理をすることができます。


    (3)川崎臨海新メガソーラー(浮島太陽光発電所)
    川崎臨海新メガソーラは川崎市と東京電力(株)の共同事業による合計最大出力が2万kWのメガソーラーです。太陽電池で発電した直流電力をPCS(パワーコンディショナー)で交流電力に変換し、変圧器で66kVに昇圧し、地中送電線にて首都圏に電力を供給しています。今回は2011年8月運転が開始された浮島太陽光発電所(神奈川県川崎市川崎区浮島町)を見学しました。太陽電池出力は約7,000kWであり、これによるCO2排出量削減効果は年間3,100tの見込みとなっています。