視察・調査

2011年度 生物多様性に取組む先進企業視察

(1)はじめに

2010年に開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、企業の生物多様性に関する取組みを後押しするものとなりました。EPOCでは、このCOP10により高まったEPOC会員の生物多様性への関心や取組みのさらなる発展をサポートすべく、生物多様性に取組む先進企業への視察を実施しました。今回は、(財)都市緑化機構が運営する「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)※」の認定評価が高い2社を視察することにより、参加者の方々に企業の敷地内における生物多様性の取組みに関する理解を深めて頂きました。


※民間企業・団体による所有地の緑化及びその保全活動についての評価・認定制度。生物多様性の保全もその評価対象となっている。


開催日時 2011年10月7日(金曜日)9時〜17時30分
視察先 [1]出光興産株式会社愛知製油所
[2]ソニーEMCS株式会社東海テック幸田サイト
参加者 28名

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    [1]出光興産株式会社愛知製油所<愛知県知多市>


    愛知製油所は、全長6km、幅100mのグリーンベルトを有する知多半島の臨海工業地区内にあります。その中でも愛知製油所は、全長2kmを占め、緑豊かな「公園工場」として操業時から45万本の樹木を植樹し、たくさんの小動物や鳥の姿を見ることができます。2010年には、(財)都市緑化機構が運営する「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)」を受審し、「Excellent Stage3」の認定を受けました。また、愛知県が推進する知多半島生態系ネットワーク協議会にも参加し、知多市における生物多様性の取組みを推進する代表企業の一つとして位置づけられています。
    当日は、準絶滅危惧種ミゾコウジュゾーンや伝統的なタタキ工法によるバリアフリーゾーンなどの案内を受けながら、緑地を見学しました。また、見学および質疑応答を通して、同社による生きものがくる緑地づくりの考え方、地域社会との連携、工業地帯一体となっての緑地管理の取組みなどについて参加者の方と共有いただきました。


    ・参加者の方から以下のような感想をいただきました。
    「グリーンベルトの整備を生物多様性を考慮しながら周辺企業との連携で進めており、すばらしい。」
    「他社との連携、メンテの適正化(草刈教育)という点が特に参考になった。」

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    [2]ソニーEMCS株式会社東海テック幸田サイト<愛知県額田郡>


    幸田サイトは、1972年の創立当初から、インダストリアル・パーク「緑豊かな公園工場」をめざして緑化活動に取り組んでいます。創立当初は、工場建設時に開発で造成された土地に自然を回復させることを目的に、社員自らが植樹をはじめ、緑化学習会を開催して知識を高めていきました。その後、会社敷地内にある二次林を活かし、「ソニーの森」と命名し、地域へ開放して憩いの場を提供すると共に、社員の環境教育のフィールドとしても活用しています。また、2005年から6年間連続で「SEGES」の「Excellent Stage 3」の認定を維持し、2011年3月には「Superlative Stage」へアップグレードされました。
    当日は、同社の新・環境ビジョンのもと、製品ライフサイクル全体で生物多様性に取組む活動についてお伺いしました。その後、傾斜のある「ソニーの森」を2手に別れて見学し、社員の精力的なボランティア活動によるフクロウの棲む森づくりの取組みに耳を傾けながら、手づくりの遊具を体験したり、展望台に登ったりしました。参加者には、社員を巻き込んだ森づくりの大切さを改めて感じていただきました。


    ・参加者の方から以下のような感想をいただきました。
    「ビジョン・ロードマップの見える化、従業員の関わり(持続させる工夫)という点が特に参考になった。」
    「緑地の維持をするために、人を立ち入らせ、管理をする目的をつくるという発想と想いがすばらしいと感じました。企業のこれからの有り方について必要なものだと思います。」