セミナー

2025年度 環境経営分科会(会長会社と共催)
第1回EPOC環境経営先進セミナー

「未来をつくる戦略ESG投資の本質とサステナビリティ開示基準の概要解説」


はじめに

本セミナーでは、ESG投資の歴史的背景と企業にとっての意義、そして今後求められる「SSBJ(サステナビリティ基準委員会)」によるサステナビリティ情報開示基準の概要について2名の講師からご解説いただきました。なお、今回は会長会社との共同開催でした。

開催日時 2025年7月28日(月) 15:00~17:00
形式 リモート
参加者 計136名(見逃し配信含む)

プログラム

講演Ⅰ 「ESG投資の歴史と背景」

【講師】
 一般財団法人 電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員 富田 基史 氏


講演Ⅱ 「サステナビリティ開示基準(SSBJ)の概要」

【講師】
 デロイトトーマツサステナビリティ株式会社 マネージングディレクター 間瀬 美鶴子 氏


講演概要

(講演Ⅰ)富田氏より、ESG投資の本質的な理解を深めるため、歴史的背景や思想的基盤についてご解説いただきました。


社会的責任投資の起源
キリスト教社会では「大いに稼ぎ、大いに蓄え、大いに使う」という教えがあり、資金の使い方に倫理的な責任を求める考え方が根付いています。20世紀には、酒・タバコ・軍需産業や人種差別に関与する企業を排除する投資ファンドが登場しました。そして2000年代には国連グローバルコンパクトや責任投資原則(PRI)を契機に、ESG投資が広く普及しました。


気候変動分野における規範形成と反ESGの動向
パリ協定以降、ESG投資はClimate Action 100+などのイニシアチブを通じて、GHG排出企業へのエンゲージメント強化へと向かいました。一方で、過度なGHG排出削減要求や政治的影響により、米国の一部金融機関ではESG関連イニシアチブからの離脱も見受けられます。


企業価値と情報開示の関係
無形資産(企業イメージ、人的資本など)の重要性が高まり、ESGへの取り組みが企業評価に直結するようになりました。投資家による企業選定には、サステナビリティ情報の開示が不可欠となり、SSBJなどの開示基準への対応が求められています。


質疑応答
情報開示の過剰さに対する最適化の動きがあることや、今後のエンゲージメントの深化により投資家の理解が進むことが期待されるとのコメントがありました。また、ESG分野における無形資産の評価には、重みづけの工夫が必要とのご意見もありました。


講師の富田氏

富田 氏


(講演Ⅱ)間瀬氏より、SSBJ基準の背景、開示すべき情報、開示基準の概要、企業対応について、今まで知見のなかった参加者にも分かりやすくご説明いただきました。


SSBJとは
企業のサステナビリティ情報開示基準を開発するために、IFRS財団がISSB(International Sustainability Standards Board)を組織しISSB基準が開発されました。それを受けて日本でもSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)基準が開発されています。両者間で多少構成は異なりますが、整合性を保っています。


サステナビリティ開示情報
開示情報の利用対象者は投資者・融資者・債権者であり、開示情報はそれらの利用者の意思決定に有用な情報であることとされています。有用な情報とは、利用者の意思決定への関連性があり、完全性・中立性・正確性をもつこと、さらに比較可能性・検証可能性・適時性・理解可能性を有することです。


サステナビリティ開示基準の概要
SSBJ開示基準にはユニバーサル基準、一般開示基準(S1)、気候関連開示基準(S2)の3つがあります。
開示についての要件としては、財務諸表と同じく有価証券報告書で開示すること、開示のタイミングや報告期間も財務諸表と同一※1であることなどが検討されています。また内容としては、TCFDをベースにしたガバナンス・戦略・リスク管理・指標および目標の開示が求められます。開示のタイミングについては、初年度開示から2年間の経過措置として有価証券報告書の開示日より遅らせる二段階開示も含めて検討中です。


制度開示に向けて
サステナビリティ情報開示はこれまでの統合報告書などでの任意開示と異なり、有価証券報告書での開示となるため、経営者責任が重くなり、情報の信頼性に対する強固な内部統制が必要になります。制度開示への企業の対応としては、関連する部門間の連携を図り、全社の知見を活用することが重要です。


質疑応答
SSBJの開示タイミングについて意見交換がありました。


講師の間瀬氏
間瀬 氏

以上