セミナー

2018年度第2回EPOC環境経営先進セミナー
「海外化学物質規制の最新動向とサプライチェーンを含む企業の対応」


概要

海外の化学物質規制が強化されていく中で、企業は常に法規制動向をウォッチする必要があります。特に輸出関連企業においては、自社とともにサプライチェーンの化学物質管理が重要になっています。今回はこの分野の専門家の方々より、海外化学物質規制の最新動向と顕在化しているサイレントチェンジ問題、そしてサプライチェーンを含めた企業の対応についてご講演いただきました。参加者の皆様からは、REACH規則・RoHS指令の最新動向、およびサプライチェーンにおける化学物質管理の重要性について知見を得られ、有意義だったというご意見をいただきました。


日時:平成31年2月6日(水) 14時〜17時
会場:名古屋商工会議所2F大会議室(名古屋市中区栄2丁目10-19名古屋商工会議所内)
参加者:61名

<プログラム>

    • 14時〜14時05分
    • 開会挨拶
    • 14時05分〜15時10分
    • 【基調講演】
      「海外化学物質規制の動向と企業対応」

    【講師】
    松浦 徹也 氏(一般社団法人 産業環境管理協会 技術参与)

    【講演概要】
    欧州REACH規則、RoHS指令、についてご講演いただきました(米国、中国などの規制については講演時間の関係で資料掲載のみ)。冒頭にリサイクル原料のコンタミが原因と思われる違反事例の解説があり、REACH規則では、SVHCの最新追加情報(197物質;2019年1月時点)や制限の強化(対象製品品目の拡大)など解説されました。また、RoHS指令では、制限物質追加案や製造者の義務について解説がありました。 次に、一部の製品群を除き今年からRoHS指令適用が開始されるフタル酸エステルに対する企業の対応についての事例紹介がありました。製造・輸送工程のさまざまな場面でのコンタミのリスクを排除する必要があり、現場環境の分析では、分析装置の測定範囲・精度をよく検討して測定方法を定めることが肝要とのことでした。事例では製品が接触する塩ビマットからの製品への移行(コンタミ)について紹介がありました。参加された企業の実務ご担当者からは、最新の規制情報と企業の対応ポイントの解説が有用でしたとのご感想がありました。


    講師の松浦氏

    ご講演の様子
    • 15時10分〜15時25分
    • 休憩
    • 15時25分〜16時15分
    • 【事例講演1】
      「サイレントチェンジ問題の現状と企業ができる
      対応について」

    【講師】
    片岡 孝浩 氏
    (独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センター 製品安全技術課 主査)

    【講演概要】
    NITEは経産省のもとで設置された法人で、製品安全部門では、製品の事故に関して原因を調査して、その結果 を情報公開や、経産省への報告により再発防止につながる活動を行っています。サプライチェーンがグローバル化する中 で、この数年2次・3次サプライヤーによる材料変更が原因で製品事故につながるサイレントチェンジ問題が顕在化し てきたとのことです。
    事例では、ACアダプターの発火事故の原因が、絶縁樹脂に赤リンが配合されていたケースや、歩行者の転倒事故の 原因が靴のソールの材質変更であったことなど紹介されました。背景には、製品メーカーのコストダウン要求などがありま す。しかし、PL法の観点から、製品での事故において、被害者への賠償支払いは、直接的には最終製品メーカーの求 められることになります。対策としては、契約時に2次・3次サプライヤーが無断で材質・製法などを変更しないような条 項を設けることと、そのようなサプライヤーには、監査をしっかり実施してサイレントチェンジの芽を摘むことが重要とのことで す。参加者からは、初めて聞く内容で興味深かったとのご感想がありました。


    講師の片岡様

    ご講演の様子
    • 16時15分〜17時
    • 【事例講演2】
      「富士通グループにおける製品含有化学物質管理の取組み」

    【講師】
    永宮 卓也氏
    (富士通株式会社 環境・CSR本部 環境技術統括部 環境デザイン部マネージャー)

    【講演概要】
    富士通グループの環境経営は、本社川崎工場での緑地整備など工場の環境配慮に始まり、現在はSDGsの17の 目標とのリンクを意識しているとのことです。含有化学物質規制については、違反した場合は操業・罰金・評判リスクに つながるため、重要視しており、環境課題の課題別委員会の中に製品化学物質委員会が設置されています。
    電機製品は、部品点数が増加する中で完成製品を分析することは非常に困難となり、サプライヤーによる含有化学 物質情報の入手や非含有宣言書の取得が現実的です。サプライヤーにとっては、複数の顧客に個別対応するのは非 合理的なので、業界での標準ツールが必要となり、chemCHERPA-AIが標準化されるようになりました。
    サプライヤー監査には、富士通独自のCMS(化学物質マネジメントシステム)の中で、合理的かつ共通性のある チェックシートなどのツールを活用しているとのことです。そのような監査の中で、サイレントチェンジにつながる不適合を事 前に発見した事例もあったとのことです。参加者からは、具体的な企業の対応についての知見を得られて有意義だった というご感想がありました。


    講師の永宮氏

    ご講演の様子
    • 17時
    • 閉会挨拶