フォーラム等

EPOCフォーラム報告書


環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)では、2019年度EPOCフォーラムを開催しました。
今回は基調講演として、地球温暖化問題に関する科学的知見の現状と「イノベーション」による解決の必要性についてお話し頂きました。イノベーション事例として、交通における「自動運転」と「MaaS(Mobility as a Service)」に焦点を当てて、先進的な取組みを進める企業様から技術開発や事業展開についてご紹介頂きました。

日時:
2019年9月25日(水曜日)14時00分〜17時00分
場所:
サイプレスガーデンホテル 2階 天舞の間
参加者:
104名
主催:
環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)
後援:
経済産業省 中部経済産業局、環境省 中部地方環境事務所
一般社団法人中部経済連合会、名古屋商工会議所
一般社団法人中部産業連盟、一般財団法人省エネルギーセンター東海支部


プログラム

14時00分〜14時05分 【開会挨拶】
EPOC会長 柘植 康英 
東海旅客鉄道株式会社 代表取締役会長
14時05分〜15時15分 【基調講演】
「地球温暖化問題の探求:リスクを見極め、イノベーションで解決する」

一般財団法人 キヤノングローバル戦略研究所
研究主幹 杉山 大志 氏

杉山様からは、IPCC評価報告書の執筆者としての立場から、地球温暖化問題の科学的な理解について、予測の不確実性や事実・データに関する解釈の問題点など、我々が見落としがちな視点からお話し頂きました。人類や生態系は、これまで様々な環境変化に適応して繁栄してきた事実があるものの、予測に伴うリスクを低減するためには、一定のCO2排出削減が望ましいとのご見解でした。
ご講演の後半は、環境問題解決に資するイノベーションの必要性についてお話し頂きました。パリ協定の2℃目標は、現存技術だけでは達成困難で、更なるイノベーションを前提とすることをIPCCも明示しています。そのためには、これまでに環境問題を解決してきた「アフォーダブルな(=受け入れ可能なコストの)技術」が重要であるとして、自動運転車、EV、カーシェアリングによる大幅なCO2削減の可能性や、他の実例も交えて分かり易くご解説頂きました。また、例えば風力発電のような環境技術も、プロペラに使用されるCFRP材料といった要素技術が、他の目的から実用化が進んできた実例を挙げ、イノベーションには技術の組合せが重要であり、それを実現する「二重の迂回戦略」という概念についてご紹介頂きました。

15時15分〜15時25分 【休憩】
14時55分〜15時40分 【事例紹介】
(1)「来たるべき自動運転社会の絵姿とティアフォーが描くこれからの歩み」

株式会社ティアフォー 取締役/COO 田中 大輔 氏

(株)ティアフォー様は、レベル4の自動運転の公道試験走行を日本で初めて実現したパイオニアです。同社の運営責任者である田中様からは、自動運転の市場や技術、社会環境についてご紹介頂き、自社の取組みを踏まえた現在の技術的課題や将来に向けた取り組みなど、普段は伺い知ることの出来ない貴重な内容をお聞きすることができました。実証試験の動画も多く交えてお話し頂いたため、大変興味深くお話を伺うことができました。

16時10分〜16時55分 【事例紹介】
(2)「社会課題解決に寄与するMaaSの実現に向けて」

株式会社NTTドコモ 執行役員
法人ビジネス本部 IoTビジネス部長 谷 直樹 氏

(株)NTTドコモ様は「いつでもどこでもだれとでも快適で安心のモビリティを提供し続ける」をビジョンに掲げ、交通の社会課題解決を目指した取り組みを進めています。谷様からは、同社がMaaS事業として既に商用投入しているAIタクシーとAI運行バスや、全国で実施しているMaaS実証事業についてご紹介頂きました。また、同社が展開を推進している次世代通信システム5Gによるサービスの更なる進化の可能性についてもご紹介頂き、大変参考になるお話を伺うことができました。



フォーラムを終えて

地球温暖化問題に関しては、本フォーラムの開催直前に「国連気候行動サミット」が米国で開催され、関連するデモなどが行われる等、世界的に盛り上がりの機運が高まっています。そのような情勢において、今回のフォーラムでは、IPCC評価報告書の執筆当事者から、直接貴重なお話を伺うことができました。ご紹介頂きましたアフォーダブルな技術の組合せによるイノベーションの必要性については、我々が具体的な行動を始める前段において、忘れてはならない、大事な視点であると考えられます。 
また、イノベーション事例として取り上げた自動運転やMaaSは、技術進歩や社会環境の変化が大変速く、現状の様々な制約も将来解消される可能性があります。実現すれば、エネルギー効率改善や利用効率の向上等によって、大幅なCO2削減が達成されるはずです。聴講者の皆さまには、イノベーションを通じた地球温暖化問題の解決の可能性について、少しでもご理解を深めていただくことができたかと存じます。
ご講演頂きました講師の方々には、この場をお借りしてお礼申し上げます。

EPOCは今後も会員や地域の皆さまのお役に立てるよう、勉強会や交流会等を開催して参りますので引き続きご支援、ご協力を賜りますようお願いいたします。

環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)会長会社事務局
東海旅客鉄道株式会社 総合技術本部 技術開発部