視察・調査

EPOC視察(企画活動)福島地区視察会「エネルギーの低炭素化関連技術の調査」

概要

日 時: 2017年3月2日(木曜日)〜3日(金曜日)
目 的: 地球温暖化防止には、原子力エネルギー・再生可能エネルギーの活用に加え、化石資源の高効率利用が不可欠という観点から、東日本大震災で津波被害を受けたものの炉心損傷を防ぎ、冷温停止を達成した原子力発電所、化石資源の高効率利用技術である石炭ガス化複合発電所、最先端の再生可能エネルギー研究施設を視察し、理解を深める。
視察先: 1.東京電力HD株式会社 福島第二原子力発電所 様
2.常磐共同火力株式会社 勿来発電所 様
3.国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 様
参加者: 24名(EPOC会員)

各施設の見学内容


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    1. 東京電力HD株式会社 福島第二原子力発電所 様


    福島第二原子力発電所は、2011年3月の東日本大震災によって過酷事故を起こした福島第一原子力発電所から約10キロ南に位置する発電所です。津波による被害を受けたものの、過酷事故を免れ冷温停止を達成し、現在は1〜4号機の全号機において原子炉から燃料を取り出し、使用済燃料プールにて冷温保管しています。
    当日は、なぜ過酷事故を免れることができたのかについて、当時の設備被害の状況や復旧対応について詳しくご説明をいただくとともに、使用済燃料プールや格納容器内に入り原子炉圧力容器を直下から視察するなど、普段見ることのできない管理区域の貴重な設備を見学させていただきました。1号機の原子炉建屋南側には津波の痕跡があり、当時の状況を物語っていましたが、防潮堤の設置工事や高台における緊急電源車両の配備等、当時の津波被害を教訓とした各種安全対策が進められていました。

    概要説明/原子炉格納容器内の圧力容器直下

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    2.常磐共同火力株式会社 勿来発電所 様


    勿来発電所は、常磐地区の低品位炭の活用を目的に1955年に設立された発電所です。当時は石炭専焼の発電所でしたが、燃料情勢の変化に柔軟に対応し、現在では輸入炭に加えて下水汚泥や木質チップなどのバイオ燃料も活用しながら、地球温暖化対策に努めています。10号機で採用されている石炭ガス化複合発電(IGCC)方式は、個体の石炭をガス化し、蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電方式です。これにより、従来の石炭火力の発電効率約42%に対して、将来的に48〜50%の発電効率が見込まれ、石油火力とほぼ同等のCO2排出量での石炭利用発電を可能としています。
    当日は、大規模な屋内貯炭場や、運転停止中ではありましたが、IGCCプラントの各種設備を視察させていただき、また日本におけるIGCCの開発経緯から他国におけるIGCC実証試験の状況やガス化方式の違いなど、詳しくご説明いただきました。2020年には勿来発電所隣接地に50万kW超級のIGCCの建設も計画されているとのことで、今後のIGCC技術に注目が集まっています。

    集合写真(背景:10号機 IGCCプラント)/屋内貯炭場

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    3.国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 様


    福島再生可能エネルギー研究所は、政府の「東日本大震災からの復興の基本方針」(2011年7月)を受けて、2014年4月に設立された研究所です。再生可能エネルギーの出力の時間的な変動、コスト、地域偏在などの大量導入に向けた技術的課題を解決し、またそれを通じて東北地方の復興に貢献することをミッションとして、各種研究を実施しています。
    当日は、地熱、太陽光、風力をはじめとした各種再生可能エネルギー研究の実証フィールドや研究施設を視察させて頂くとともに、水素キャリア製造技術など各エネルギー検討チームにおける研究開発の状況や成果について、詳しくご説明をいただきました。

    集合写真(背景:風力、太陽光実証フィールド)/地熱実証フィールド


視察を終えて

今回の福島視察を通して、東日本大震災を経験した原子力発電所における当時の対応や現在の状況、また地球温暖化防止に貢献する化石資源の高効率利用技術や最先端の再生可能エネルギーの研究状況について、理解を深めることができました。
東日本大震災から6年が経過し、エネルギー情勢が大きく変化していますが、S(安全)+3E(経済性)、(安定供給)、(環境保全)の観点から、多様なエネルギー源の組み合わせが必要です。今後も地球温暖化対策に貢献する各種エネルギーの利用技術の視察をはじめ、持続可能な経済社会の構築に向けた活動を展開してまいりますので、みなさまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。